「蛇にピアス」を見て

蜷川幸雄監督

金原ひとみ原作

吉高由里子主演

この作品を見よう思ったのは原作の金原ひとみ「蛇にピアス」を中高生のころ読んで、かなり過激な内容だったのでどんなふうに映画化するのか気になったからである。原作は第130回芥川賞を綿矢りさ「蹴りたい背中」とともに受賞し、当時金原ひとみが20歳、綿矢りさが19歳と芥川賞受賞最年少記録を塗り替え話題となった。この2作のどちらか1つを選ぶなら「蹴りたい背中」の方が断然面白かったと思うけれど、20歳の金原ひとみが村上龍「限りなく透明に近いブルー」にも似た退廃的な世界観の作品を書いたことが衝撃だった。今までどんな人生を歩んできたんだろうと考えさせられた。また高校生のころ今作を手掛けた蜷川幸雄監督の舞台「オイディプス王」を見てとても感動したから、舞台ではなく映画ならどんな表現をするのかという期待もあった。

 19歳のルイはあてどなく街をうろつき過ごしているなか、蛇のように先端が二股に分かれた舌を持つアマに惹かれ付き合いはじめる。アマのスプリット・タンや刺青などの人体改造に憧れたルイはシバと呼ばれる彫り師を訪ね、舌にピアスを空け背中に龍と麒麟の刺青を施す。痛みによる生の実感から徐々にシバとも肉体関係を持つようになるが、ある日アマがルイにナンパしてきた男を殴り殺してしまったことで3人の関係は思わぬ方向に進んでゆく。

 ルイは吉高由里子が演じているのだが、私にとって吉高由里子は三井住友銀行のCMやドラマ「わたし、定時で帰ります。」の明るくてほんわかとしているイメージが強かっただけに、この映画ではギャルのファッションで登場して驚いた。それだけでなく舌にピアスを空けたり背中に彫りを入れていくシーンはショッキングで見ているこちらが痛々しくて直視できなかった。ピアスは耳になら一度空けてみたいと考えていたけど、この映画を見た後だと当分はする気になれない。

 純文学を映画化しているのではっきりとしたストーリー展開がなく途中退屈に感じることもあったが、吉高由里子のまるっきり違う一面を見られてよかった。

蛇にピアスを買う

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