二階堂ふみ、オススメ作品【5選】

写真家蜷川実花らしい映像美、太宰に必要だったまるで異なる3人の女性が魅力的な『人間失格 太宰治と3人の女たち』

出典:ナタリー

 「人間失格 太宰治と3人の女たち」(2019)

小栗旬主演

津島美知子:宮沢りえ

太田静子:沢尻エリカ

富栄:二階堂ふみ

 この映画はアマゾンプライムビデオで見た。アマゾンプライムビデオに登録していても有料でしか見ることができない作品だったので、無料になったのを見たときは飛びついた。

 ストーリーは太宰治が「斜陽」を書くあたりから愛人と心中するまでが描かれていて、タイトルにもある通り太宰治と関わる3人の女性がメインキャラクター。一人は太宰治の奥さん、津島美知子(宮沢りえ)。この人物はもともと太宰治の師であった井伏鱒二が紹介して結婚することになった。作中で登場するキャラクターの中で男女問わず最もしっかりとし、愛人のもとへゆく太宰を責めもせず娘とダウン症を患っている息子を女手一つで育てている。

 二人目は太宰の愛人、太田静子(沢尻エリカ)。太田静子は「斜陽」を書くときに深く関わっていて、「斜陽」というのは太田静子が書いた日記をもとに書かれた作品だ。太宰は太田静子からその日記を手に入れるために押して引いて(押して押してかも?)手に入れようとし、挙句の果て子供まで作ってしまう。しかしすでに家庭があった太宰は子供のことを認知するものの、態度はそっけなくあんまりにひどいものだった。

 三人目はまたしても愛人、美容師の富栄(二階堂ふみ)。富栄は太宰が心中した女性で、映画内では美容師としての姿は描かれないが、太田静子と太宰治との間に生まれた子供に「治子」という名前がつけられると「名前一文字だって 髪の毛一本だって あたしが命がけで大切にしていた宝だったのに」と泣きじゃくり、奥さんはともかく太田静子に会いに行くなら青酸カリを飲むと脅したり、とにかく精神的に不安定だった。他に二階堂ふみが演じている役を見ても、ここまで破滅的な女性はいないので見ごたえがあると思う。

草むらに落ちていた一体の死体を縁に、普段は話したこともないような高校生3人が集まった。不安定な青春時代を描く『リバーズ・エッジ』

出典:GYAO!

「リバーズ・エッジ」(2018)

行定勲監督

二階堂ふみ主演

 この映画は二階堂ふみが出演している作品を見たかったから、アマゾンプライムでみつけて見てみることにした。

 二階堂ふみが演じる若草ハルナは普通の高校生活を送る女子高生だった。ところがある日元カレの観音崎にいじめられている山田一郎を助けたら、山田はお礼として自分の宝物を見せてあげると言って、草むらのなかに案内し、そこに一体の死体があることを教えてくれた。山田は「自分は生きているか死んでいるかいつもわからないけど これを見ると勇気が出るんだ」と言って、同じ学校の一つ下の学年で、モデルをしていることで有名な吉川こずえもこの死体について知っていると話した。吉川こずえは一見モデルと学校生活を両立していてキラキラした生活をしているようだが、裏では過食しては吐く行為を繰り返していた。

 それぞれが今の環境をどうにかやり過ごして生きているように見えていても、実際はそうではない。山田もこずえも、山田をいじめている観音寺も、ハルナと普段は友達でいながら観音寺と関係を持つ小山ルミも、そしてハルナ自身もまたそうだった。今作では高校生たちがやり過ごせていない部分が、途中に挟まれる、個人個人にスポットライトを当てたインタビューで明らかにされて、数々の事件が起こり失ってしまうものがあっても前に進んでいく様子が描かれている。

 二階堂ふみの演技も素晴らしいけれど、自分の青春時代を思い返してどのキャラクターに共感するのか、考えながら見たら楽しいかもしれない。

パパラッチは下品? それとも真実を暴いている? 嫌々この仕事についた主人公、二階堂ふみと敏腕カメラマン、福山雅治がタッグを組んだ『SCOOP!』

出典:dTV

「SCOOP!」(2016)

行川野火:二階堂ふみ

都城静:福山雅治

 この作品はアマゾンプライムビデオで見た。二階堂ふみが出演する作品を探していたときにたまたまこの映画をみつけて見てみることにしたのだけれど、正直最初に目が行ったのは福山雅治の方だった。ちょうどこの映画を見る前に福山雅治主演、ガリレオシリーズの「容疑者Xの献身」を見てしまっていたから、生真面目な物理学者の役とゴシップを追っかけるカメラマンの役のギャップが激しくて、福山雅治はこんな役も演じていたのかと驚いた。福山雅治は写真好きで有名だから、この役が回ってきたのかもなんて想像する。

 ストーリーは嫌々ゴシップ雑誌の編集をやることになった行川野火(二階堂ふみ)は、ネタを追いかける能力をつけるために、かつては数々スクープをカメラに収めてきた敏腕カメラマン、現在は芸能ゴシップなどを撮る中年カメラマンの都城静(福山雅治)と組んで仕事を教わっていく。はじめはうまくパパラッチできなくて芸能人などと揉めてしまうこともあったが、だんだんとゴシップネタをすっぱ抜くことが快感になっていく野火とそれを嬉しく思う静。しかし仕事をしていくうちにゴシップ以外の事件も扱うようになり、最後野火は今までで最大のスクープの瞬間を捉えるけれど、その時静は…

 パパラッチというとあんまりいいイメージを持たないが、この映画を見て少し好感が持てた。

原作は桜庭一樹、直木賞受賞作。近親相姦を描いた『私の男』

出典:映画.com

「私の男」(2014)

熊切和嘉監督

浅野忠信・二階堂ふみ主演

 この小説は中学生のころ読んで、当時近親相姦をテーマにした作品を読んだことがなかっただけに、かなりショッキングだったのを覚えている。小説から映画にも興味を持って、高校生のころゲオで借りて見てみた。原作では主人公、腐野花(二階堂ふみ)が章ごとに若返って描写されていくけれど、映画では花が子供から大人になっていく。個人的には原作の時系列で物語を見る方が、花と育ての親、淳悟(浅野忠信)の歪んだ関係のルーツを紐解いていくような感覚があってより身に迫って感じた。原作は文庫の方が小さく値段が安いので手に取りやすいと思うけれど、鈴木成一デザイン事務所の装丁がすばらしいからぜひこちら↓を手に取ってほしい。

 物語は北海道を舞台にはじまり、災害で孤児になってしまった花は淳悟に引き取られ育てられるけれど、2人の関係はどこか歪んだものだった。まだ幼い花、謎めいている淳悟、そして淳悟と結婚しようかと迷っている大塩小町は、なんとなく年に似合わないませたところがある花に不気味さを感じていた。2人の関係に疑問を持つようになっていたある日、小町は淳悟が花に自分の指を執拗に舐めさせているところを目撃してしまう。耐えかねて北海道から東京の仕事に転職する小町、その他にも2人の関係に違和感を持つ人間が現れ出した。2人は自分たちの関係を守るために殺人すら犯してしまう。

 浅野忠信が演じる淳悟の堕落しているのにどこか目を惹いてしまう危うい魅力、二階堂ふみが演じる花の純粋でまっすぐに淳悟を愛しているけれど、親子の愛情と男女の愛情の区別がついておらず、ときに子供のように甘え、ときに女のように独占欲を露にする狂気。見終える瞬間まで気の抜けない作品だ。

埼玉県人に特にオススメ! 爆笑必至の『翔んで埼玉』

出典:映画.com

「翔んで埼玉」(2019)

武内英樹監督

二階堂ふみ・GACKT主演

 この作品はテレビで予告を見た瞬間に見たいと思って、映画館に駆け込んだ。埼玉県の映画館で見たので当たり前だけれど、周りも全員埼玉県民だったと思う。笑うタイミングなどが皆揃っていて、劇場内に一体感があったのが楽しかった。

 原作は同タイトルで、作者は魔夜峰央。魔夜峰央の作品は実際に読んだことはないが、絵柄が独特でインパクトがあるので、1度手に取ってみたい。

 ストーリーは完全なフィクションで、埼玉県民が東京都で徹底的に差別される様子が描かれている。その代表的な人物が東京都知事の息子、壇ノ浦百美(二階堂ふみ)であった。そんな百美はある日アメリカから転入してきた麻実麗(GACKT)に惹かれ、2人は徐々に距離をつめていくのだが、埼玉狩りが街で行われている最中に、麻実麗は実は埼玉出身であることが発覚する。それがわかってもなお麗と一緒にいたかった百美は、埼玉県民のために戦う覚悟を固めるのだった。

 5本紹介した映画の中で二階堂ふみがコメディな役を演じているのはこの一作だけだ。もし二階堂ふみを追って作品を見ているときに、彼女が演じる役が重すぎると感じたら、まるで別の女優を見るつもりでこの作品を見てほしい。

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